目次主文当事者の主張裁判所の判断発言集

東京地裁平成9年5月26日判決

ニフティ名誉毀損事件第一審判決


三 反訴関係の争点(右第二の二2)について

1 争点2(一)(スクランブル事件が、被告Y1の名誉を毀損し、不法行為となるか否か。)について

 (一)

 原告が、被告Y1のリアルタイム会議室参加の際、スクランブル機能を用いて事実上被告Y1を排除したことは右一2(三)において認定したとおりである。

 (二)

 いわゆる村八分は、継続して特定人をある集団や生活共同体等から排除するものであって、排除された者の社会生活に深刻な悪影響を与えるものである。これに対し、本件におけるスクランブル事件は、原告が、ニフティサーブにおいて、会員が用いることを許されているスクランブル機能を用い(原告本人、弁論の全趣旨)、ただ一度、一時的にRT会議室から離脱したにとどまるものであり、原告のとった右措置についてのRT常駐要員としての相当性の問題は別としても、被告Y1の社会生活に重大な影響を与えたものということはできないから、法的に、いわゆる村八分と同視するほどの違法性が存すると認めることはできない。

2 争点2(二)(原告が、被告Y1のプライバシー権を侵害する発言を行ったか否か。)について

 (一)

 この点について、平成5年5月21日に行われたRT会議室の記録(甲80)によると、原告は、被告Y1に「以前ニューズウィークに勤務していたことはないか」と質問し、被告Y1がこれを肯定している会話があることを認めることができる。しかしながら、右の記録中には、これを越えて原告が「被告Y1が職場でトラブルを起こした」旨の発言があったことを認めることはできず、「以前ニューズウィークに勤務していたことはないか」と質問した以上に被告Y1のプライバシーを侵害したと認めることはできない。  なお、丁2の2には、ハンドル名TSこと須藤徹が、五月中旬ころの本件会議室のリアルタイム会議室において、原告と被告Y1が参加していた場において、被告Y1がトラブルを起こしたとの話題が原告から出たことがある旨の記載がみられるが、右の回答者の記憶にはあいまいな点があり、右書証の記載に全幅の信頼を置くことができるかについては疑念が残り、これを裏付ける客観的資料が証拠として提出されているわけではないことに照らすと、右証拠は採用できない。

 (二)
したがって、この点に関する被告Y1の主張も理由がない。

 3 

よって、争点2(三)について判断するまでもなく、被告Y1の原告に対する反訴請求は理由がないことになる。

第五 結論

 以上の次第であって、(一) 原告の本訴請求は、(1) 被告ら各自に対して10万円、被告Y1に対してさらに40万円及び右各金員に対する本判決言渡の日の翌日である平成9年5月27日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限りにおいて理由があるからこれを認容し、(2) その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、(二) 被告Y1の反訴請求は、いずれも理由がないからこれを棄却し、(三) 訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条、93条但書、仮執行の宣言につき同法196条1項に従い、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第一三部
裁判長裁判官 園部秀穂
   裁判官 鬼澤友直
裁判官田中一彦は、差し支えのため署名捺印することができない。
裁判長裁判官 園部秀穂

総目次に戻る
次に進む

このページにつきまして、ご意見などございましたら、 メールにてお願いします。
作成責任者:町村泰貴
T&Vのホームページ