目次主文|当事者の主張|裁判所の判断発言集

東京地裁平成9年5月26日判決

ニフティ名誉毀損事件第一審判決


事実及び理由


第一 請求

 一 本訴関係

1 被告らは、原告に対し、各自、金1000万円及びこれに対する平成9年5月27日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
2 被告らは、原告に対し、商用ネットワーク・NIFTY-Serve(以下「ニフティサーブ」という。)上に、別紙1の第一項記載の謝罪広告を、同別紙第二項記載の掲載条件で掲載せよ。

 二 反訴関係(被告Y1の請求)

1 原告は、被告Y1に対し、金200万円及びこれに対する平成6年12月20日から支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
2 原告は、被告Y1に対し、ニフティサーブ上に、別紙2の第一項記載の謝罪広告を、同別紙第二項記載の掲載条件で掲載せよ。
 

第二 事案の概要

一 当事者及び本訴反訴の主張の概要

1 当事者

 (一) 被告ニフティ(Y3)は、パーソナルコンピュータ、コンピュータ等の装置間の通信(以下「パソコン通信」という。)を主体とした一般第二種電気通信事業及び関連情報処理サービス業等を営む会社であり、パソコン通信ニフティーサーブの主宰者である。
 (二) 原告は、平成元年4月にニフティサーブの会員(以下、単に「会員」ともいう。)となり、「C**」とのハンドル名(ニフティサーブにおいて、自己を表示するために用いる名称)を用いていた者である。
 (三) 被告Y2は、平成5年11月ころから(丙3、被告Y2本人。ただし、 契約書〔丙1〕は10月25日付け。)、ニフティサーブの現代思想フォーラム(略称・FSHISO。以下「本件フォーラム」という。)のシステム・オペレーター(SYSOP。フォーラムマネージャーともいう。以下「シスオペ」という。)を担当している者である。なお、シスオペとは、被告ニフティ(Y3)との間の契約に基づき、同被告から、ニフティサーブ中の特定のフォーラムの運営・管理を委託されている者をいう。
 (四) 被告Y1は、「気が小さいY1」及び「LEE THE SHOGUN」とのハンドル名を用いていたニフティサーブの会員である。

2 本訴関係の主張の骨子

 (一) 被告Y1は、本件フォーラムに設置されている電子会議室に、別紙発言一覧表(一)ないし(四)の各「発言番号欄記載の発言番号を付された文章(これらに対応する「名誉毀損部分」欄記載の各文章を含むもの。なお、一つの発言番号を付された文章全体を指して、以下「発言」といい、これらの各発言を総称して、以下「本件各発言」という。)を書き込み、原告の名誉を毀損した。
 (二) 被告Y2は、本件フォーラムのシスオペとして、本件各発言を直ちに削除する等の作為義務があったのにこれを怠り、右各発言によって原告の名誉が毀損されるのを放置した。
 (三) 被告ニフティ(Y3)は、ニフティサーブの主宰者として、被告Y2を指導し、本件各発言を削除させるか、自らこれらを削除すべきであったのに、これらの措置をとらず、右各発言によって原告の名誉が毀損されるのを放置した。また、同被告が、被告Y1の本名、住所等を開示するようにとの原告の要求に応じなかったため、原告の損害が拡大した。
 (四) そして、原告は、右(1)のような主張事実を前提として、被告ら各自に対し、(1)慰謝料1000万円及びこれに対する平成9年5月27日(本判決言渡しの日の翌日)から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払、並びに、(2)ニフティサーブ上への謝罪広告の掲載を求めている。なお、原告の、被告Y1及び同Y2に対する請求は、いずれも不法行為に基づくものであり、被告ニフティ(Y3)に対する請求は、(1)については使用者責任又は債務不履行(安全配慮義務違反)、右(2)については使用者責任に基づくものである。

3 反訴関係の主張の骨子

  被告Y1は、原告が、本件フォーラムにおいて、
(一) 被告Y1をいわゆる村八分にして同被告の名誉を毀損した
(二) 被告Y1の職場でのトラブルを暴露して、同被告のプライバシー権を侵害した
などと主張して、原告に対し、不法行為に基づき、慰謝料合計200万円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成6年12月20日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払、並びに、ニフティサーブ上への謝罪広告の掲載を求めている。


二 争点

1 本訴関係

(一) 被告Y1の本件各発言によって、原告の名誉が毀損されたか(全被告関係)。
(二) 被告Y2の責任原因(被告Y2及び同ニフティ関係)
(三) 被告ニフティ(Y3)の責任原因(被告ニフティ(Y3)関係)
(1) 使用者責任
(2) 債務不履行責任(安全配慮義務違反)
(四) 損害額及び謝罪広告掲載の要否

2 反訴関係

(一) 後記スクランブル事件(第三の一2(一)(2)<3>)によって、被告Y1の名誉が毀損されたか。
(二) 原告が、被告Y1のプライバシー権を侵害する書き込みをしたか否か。
(三) 損害額及び謝罪広告掲載の要否
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作成責任者:町村泰貴
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