目次主文当事者の主張||発言集

東京地裁平成9年5月26日判決

ニフティ名誉毀損事件第一審判決


第四 当裁判所の判断

一 前提事実

 (証拠の引用のない事実は、争いのない事実又は当事者が明らかに争わない事実である。)

1 ニフティサーブの概要

 (一)

 被告ニフティ(Y3)が事業として行っているパソコン通信ニフティサーブは、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサー等(以下「パソコン等」という。)を電話回線で主宰会社のホストコンピュータに接続することにより、ネットワークに加入している会員同士で情報交換を行ったり、会員がホストコンピュータ内に蓄えられた情報を引き出したりすることを内容とする通信手段である(乙19)。

 (二)会員と被告ニフティ(Y3)との間の法律関係

 (1) ニフティサーブにおいては、会員規約(本件各発言がされた当時のものは乙4)が定められ、これを承諾したうえでニフティサーブヘの加入手続をした者のみが会員となるものとされているところ、ニフティサーブに加入しようとする者は、被告ニフティ(Y3)の「イントロパック」等を取得し、仮IDにより、公衆回線からニフティサーブにアクセスして、その場でこれに加入する手続(オンラインサインアップ)によって、容易に会員となることができる。なお、会員規約には、<1> フォーラムに登録された発言等は、被告ニフティ(Y3)又はシスオペにより、会員への事前の通知なく、題名の変更、フォーラム内での複写、移動等が行われる場合があること、<2> フォーラム、電子掲示板等に書き込まれた発言等の内容が、被告ニフティ(Y3)又はシスオペにより、他の会員又は第三者を誹謗中傷し、または、その恐れがあると判断された等の場合には、会員への事前の通知なく右発言等が削除されることがあること、<3> 会員が、会員規約に違反したり、被告ニフティ(Y3)によって、会員として不適当と判断された場合には、被告ニフティ(Y3)は、当該会員の会員資格を、事前に通知、催告することなく、一時停止し、又は、取り消すことができること等が規定されている。

 (2) 右(1)のようなニフティサーブヘの入会手続を経て、正式に会員となった者に対しては、被告ニフティ(Y3)から各会員固有のID番号を与えられる。会員は、一定の基準に基づいて算出された額の利用サービス科を支払うことにより、ニフティサーブを利用することができる。

 (3) 右(1)及び(2)に照らすと、被告ニフティ(Y3)と会員との間においては、会員規約に基づき、被告ニフティ(Y3)が、会員に対し、ニフティサーブというパソコン通信のネットワークを利用することができる権利を与え、その対価として、当該会員が、被告ニフティ(Y3)に対し、一定の利用サービス科を支払うことを主旨とする契約(以下「会員契約」という。)が締結されているものということができる。

 (三) フォーラム及び電子会議室

 (1) ニフティサーブにおいては、多様なテーマに関して、興味を同じくする会員が自由に意見を交換したり、情報を取得したりすることができる場として多くのフォーラムが開設されている(甲103、乙19)。フォーラムには、会員が発言を書き込むことが可能で、また、そこにアクセスをすれば書き込まれている内容を読むことができる場所(電子会議室)があるが、各フォーラムには複数の電子会議室が設けられているのが通常である。ちなみに、原告が本訴を提起した時点では、約300のフォーラムが存在していた(乙19、証人小泉秀代)。
 会員のうち、どのような者に、どのようなかたちでフォーラムの利用を許すかは、当該フォーラムのシスオペの判断に委ねられている(シスオペにより、フォーラムの利用を正式に許された会員を、以下「フォーラム会員」という。)。一般的には、フォーラム会員以外の会員については、フォーラムの利用に一定の制限があることが多いが、本件各発言が書き込まれた当時、本件フォーラムにおいては、正式にフォーラム会員にならなくとも、自由に電子会議室に発言を書き込んだり、そこに書き込まれている内容を読んだりすることができるものとされていた(丙3、被告Y2本人)。

(2) 電子会議室への発言の書き込みは、当該電子会議室に発言を書き込む資格を有する会員が、自己の使用するパソコン等から電話回線を通じて被告ニフティ(Y3)が管理するホストコンピュータ等(以下「ホストコンピュータ等」という。)に発言を送信すること(アップロード)により行われ、ホストコンピュータ等は、このようにして送信された発言を、その内部の特定の場所(電子会議室)に記録、蓄積する。一方、電子会議室に記録、蓄積されている発言の読み出し(ダウンロード)は、当該電子会議室の発言を読む資格を有する会員が、ホストコンピュータ等に電話回線を通じてアクセスし、ホストコンピュータ等から、右会員が指定した発言について、その使用するパソコン等に有線送信を受けることによって行われる。
 ニフティーサーブにおいては、電子会議室に書き込まれた発言は、被告ニフティ(Y3)及びシスオペによって、別の電子会議室に移動したり、削除したりすることができ、発言を書き込んだ会員自身も、他の会員が右発言にコメントをつけるまでの間は、これを削除することができるものとされている。発言が削除されると、会員は、ホストコンピュータ等からその有線送信を受けることができなくなる。

 (四)フォーニフムの運営について

 被告ニフティ(Y3)と個々のシスオペの間では、被告ニフティ(Y3)が、個々のフォーラムのシスオペに対し、当該フォーラムの運営・管理を委託し、シスオぺが、その対価として、同被告から、フォーラムヘのアクセス料金の一定割合及びその他被告ニフティ(Y3)が定めるロイヤリティを報酬として支払を受けることを主旨とする基本契約(フォーラム運営契約、丙1)が締結され、これに基づき、シスオペがフォーラムの運営・管理を行っている。
 シスオペは、通常は被告ニフティ(Y3)の従業員以外の者で、当該フォーラムを扱うテーマに造詣が深い者が務めているが、その多くが、シスオペを専門に行っているわけではなく、他に本業を有し、空いた時間をシスオペとしての活動にあてている者である(甲103、丙3、証人小泉秀代、被告Y2本人。なお、甲119、135は、本件よりかなり後の記事であるし、甲134も、シスオペを本業とする者が出始めたというだけの雑誌記事であって、右認定に反するものとはいえない。)。
 また、シスオペは、サブ・システム・オペレーター(以下「サブシス」という。)等の運営協力者(運営スタッフ)を自己の権限で選任し、フォーラムの運営・管理を補佐させることができるものとされている。
 そして、フォーラム運営契約に基づき、被告ニフティ(Y3)は、シスオペに対し、「フォーラム運営マニュアル」を交付しており、同マニュアルには、シスオペの権限と責任、フォーラムの企画と育成、フォーラム関係のトラブル対応等について詳細な教示がなされていた。しかも、同マニュアルは第7章に「情報の削除に関する法律問題」という項を設け、表現の自由に関する一般的説明を行い、表現の自由においても名誉毀損、わいせつ文書、誇大広告などは法律上規制がされており「表現の自由」といってもその行き過ぎについては制限がかかっていること、「表現の自由」は基本的には国と国民という関係で問題になるものであり、国民同士、民間人同士では。問題は異なっていることを説明しているほか、ニフティサーブの会員規約14条に基づき発言を通知なしに削除できる場合を掲げ、「<1> 明らかに公序良俗に反する、あるいは、個人(または団体)を誹謗中傷していると思われるもの。<2> 明らかに商行為あるいは営利を目的としていると思われるもの。<3> 会議の流れを全く無視し、参加者にとって迷惑だと思われるもの。」のうち、「客観的にみて、明らかに<1><2>に該当すると思われるものは、シスオペの判断で即座に削除して構わないでしょう。そして、発言した会員に対しても理由を述べて削除した旨電子メールで連絡することが肝要です。合わせて、その経過と処理内容をニフティに連絡していただければ、万が一発言者(登録者)からのクレームが発生したとしても、ニフティがフォローするようにいたします。」との言及がなされている(丙2)。
 なお、本件フォーラムにおいては、シスオペや、本件フォーラムの運営スタッフが討議をする場として、これらの者のみがアクセスすることができる電子会議室(20番会議室。以下「運営会議室」という。)が設置されている。

2 本件各発言が行われるに至った経緯

 (一)

 原告は、翻訳をフリーランスで請け負って生計を立てていたが、平成元年4月ころ、パソコン通信を利用して翻訳した文書を納入すること及び翻訳者の横のつながりを作ることを考え、ニフティサーブに加入した。そして平成2年9月ころ、本件フォーラムに「フェミニズム会議室」が設置されたことを知り、本件フォーラムに参加するようになった。原告は、平成6年の春に至るまで、断続的ではあるものの長期にわたって、本件フォーラムの特にフェミニズム会議室に活発に書き込みを続けてきた。そして、平成5年12月には、当時のシスオペである坂本旬からリアルタイム会議室(RT)における常駐要員として、課金免除資格(フリーフラッグ)の資格を付与され、一般の会員のアクセスを許されない運営会議室にも参加を認められるようになっていた。(甲114)

 (二)

 被告Y1は、山口県下閑市に在住し、地元や関西の私立大学で非常勤講師として英語を教えたりなどしている者であるが、妻がニフティサーブに入会していたことから妻のIDを利用してフォーラムに参加するようになり、平成5年4月、本件フォーラムに入会した。そして本件フォーラムのフェミニズム会議室の過去の発言を読んでいるうちに原告であるC**会員らの発言に反発を感じ、同年5月5日からフェミニズム会議室においてフェミニズムを揶揄する発言を書き込んだ(甲75、76、丁7)。原告は、被告Y1の右のような発言に不快の念を持っていた(甲114)。

 (三)

 同月7日、被告Y1がフェミニズム会議室の定例RT会議に参加したところ、原告はその際その場に参加していた他の会員10名ほどに連絡して一斉にスクランブル機能を用いて別の場で話をするよう勧誘し、事実上被告Y1を同会議室から排除してしまった。被告Y1はこれに対し憤りを感じた。そしてこの事件は他の一般会員からも批判を受けることとなった。(丙3、丁7。スクランブル事件)

 (四)

 同月10日ころ、当時のシスオペである坂本旬は右のような事態に対処すべく、被告Y1に対し、電子メールにより被告Y1の個人情報を質問したところ、被告Y1は電子メールによりかって「ニューズウイーク」で編集者をやっていた旨の返信を行った。ところが坂本は、右の返信を「絶対に他言禁止です。」と付記した上、電子メールにより原告に送付した(丙19)。原告は、右の情報に基づきニューズウイーク日本版の現編集長に事情を聞くなどしてさらに被告Y1の人物調査を行った。また坂本は同月13日、被告Y1と電話により話をし、被告Y1の本名がY1であり韓国籍であることなども聞き出し、これを原告に連絡した(丙25)。

 (五)

 ところが、同月21日、フェミニズム会議室の定例RT会議において、原告は、被告Y1に対し、「あのさ、LEEさんて、NEWSWEEKにいたことない?日本版のほうね」と質問した(甲80)。原告の話の持ち出し方は「噂を聞いたことがあるから」という形のものであったが、被告Y1は、シスオペである坂本に話した内容が原告に漏れていることを察知し、原告に対する不信感を一層強めるに至った。そして、同月25日、被告Y1は、坂本が同被告のプライバシーに属する問題を原告に漏らしたことを告発する旨の発言を同フォーラムに掲載した。(丙3)

 (六)

 同年11月17日、原告は、本件フォーラムから撤退することとした。そして、従前からの仲間とともに本件フォーラムとは別のフォーラムである「生涯学習フォーラム」においてフォーラム中のフォーラムとして「フェミニスト・フォーラム」を設立することを決め、本件フォーラムにその旨掲示した。(甲114、丙3)

3 被告Y1による本件各発言

 (一)

 右のような経緯から原告は本件フォーラムにあまりアクセスすることはなくなったが、被告Y1は、本件フォーラムに、同年11月29日から平成6年3月27日にかけて、別紙発言一覧表(一)ないし(四)の各「年月日」欄記載の時期に、これらに対応する「名誉毀損部分」欄記載のような文章を含む発言(なお、個々の発言に対応する発言番号は、右各一覧表の各「発言番号」欄記載のとおり。)を書き込んだ。なお、同一覧表(一)記載の発言は6番会議室に、同一覧表(二)記載の発言は7番会議室に、同一覧表(三)記載の発言は8番会議室に、同一覧表(四)記載の発言は10番会議室に、それぞれ書き込まれたものである。

 (二)

 なお、被告Y1は、同年12月19日晩から20日明け方にかけて、「Mother Fucker」のハンドル名によりフェミニスト・フォーラム会議室に「C**の場合は単純で、あの女は弱いのではなく、弱いふりして、根性がひんまがっているからです。あれでは離婚になるでしょう。」といった原告個人を誹謗中傷する別紙発言一覧表(一)記載の符号8と同様な文章を11回にわたり掲載した(甲92ないし102)。しかし 右文章は、生涯学習フォーラムのシスオペにより削除され、同シスオペは 被告Y1がフェミニスト・フォーラム会議室にアクセスできなくする措置をとったため、その後は発言削除がされない本件フォーラムにおいて専ら発言していた。(丁7)

4 本件各発言と本件訴訟に至るまでの経緯

 (一)

 被告Y2は、本件フォーラムの前シスオペである坂本旬から、同人の後任としてシスオペに就任するよう要請を受け、平成5年10月初めころから、サブシスとして、本件フォーラムの運営にかかわるようになった(丙3、被告Y2本人)。そして、平成5年11月ころ、本件フォーラム のシスオペに就任した。(丙1、3)

 (二)

 右当時、本件フォーラムには、他人を罵倒するような内容の発言が繰り返し書き込まれ、それまで、本件フォーラムにアクセスをしていた会員が、アクセスをやめてしまうといった事態が相次いでいた。そこで、被告Y2は、右のような本件フォーラムの状況を根本的に改善することが必要であると考え、過去に本件フォーラムの電子会議室等に書き込まれた発言の内容を検討した。その結果、本件フォーラムでは、特に平成5年5月以降、シスオペ等によって多くの発言が問題ありとして削除されていたが、発言を削除された者が、同様の発言を繰り返し書き込むなどしたため、結果として、右のような発言は減少しなかったこと、フォーラム会員が従前の運営スタッフに対して不信感を持っていたことなどがみてとれた。このようなことから、被告Y2は、本件フォーラムの右のような状況を根本的に改善するためには、発言削除はできるだけ避け、公開の場で議論を積み重ねることによって会員の意識を変え、発言の質を高めることが重要であると考え、これに沿ったフォーラム運営をすることとした(丙3、被告Y2本人)。

 (三)

 その後、右3のとおり、被告Y1による本件各発言の書き込みが始まった。本件各発言のうち、<1> 別紙発言一覧表(二)記載の符号8、9の各発言についてはこれらが書き込まれた当日に(甲67、68)、同一覧表(二)記載の符号11の発言については、これが書き込まれた翌日に(甲71)、運営会議室において、本件フォーラムの運営スタッフから、発言番号等を特定したうえ、これらの発言は名誉毀損・プライバシーの侵害で脅迫ではないかとの指摘がされ、<2> また、同一覧表(二)記載の符号8の発言については、会員から、右発言が書き込まれた4日後の平成5年12月22日に、「このフォーラムではこのような個人的怨恨にみちた攻撃も言論の自由として認めるのですか? Niftyの規約にも束縛されない無法地帯なのですか?」「これらの発言を掲載したまま、何の行動も起こさないフォーラムの運営諸氏のお考えをおうかがいたい。」といった指摘がされている(甲73)。

 (四)

 被告Y2は、同一覧表(二)記載の符号3、8の各発言については、これらが書き込まれた当日に(丙52、65)、同一覧表(一)記載の符号1、同一覧表(二)記載の符号5及び11の各発言については、これらが書き込まれた翌日に(丙52、56、68)、これらの各発言の問題点を指摘する発言を、被告Y1を名宛人とするかたちをとって、本件フォーラムの7番会議室に書き込んだが、右(二)のような考え方から右各発言を積極的に削除することはせず、敢えて放置した。

 (五)

 さらに、被告Y2は、平成5年12月29日、右(三)<2>の指摘を行った会員に対し、被告Y1の発言は誹謗中傷を含むものであると考えているし、会員規約14条にも違反するものであると考えているが、被告Y1の発言は論争により解決されるべきであるからそのまま放置する旨の発言を7番会議室に掲載した。(甲50、51)

 (六)

 同月29日、原告は、被告ニフティ(Y3)のセンター窓口及び同被告の中村取締役あてに、本件フォーラムの6番及び7番会議室に原告に対する誹謗中傷が書き込まれているとの情報を得たので対処されたい旨の電子メール(具体的な発言の指摘がないもの。)を送信した(甲35、36)。

 (七)

 平成6年1月4日、被告ニフティ(Y3)の担当者である小泉秀代(以下「小泉」という。)は、電子メールを用いて、原告に対し、フォーラムの運営は基本的にシスオペに一任しているので、直接発言者に対応するか、まずシスオペに相談するようにとの回答を行うとともに(甲38)、被告Y2に対しても、右のような経緯を連絡し、対応を要請した(乙6)。

 (八)

 同月6日、原告から、被告Y2及び小泉に対し、原告を誹謗中傷する発言として別紙発言一覧表(二)記載の符号6ないし11の各発言につき、発言番号等を指摘したうえ、これらは原告に対する誹謗中傷であるので対処を求める旨の電子メールが送信された〈甲39)。これを受けて、被告Y2は、運営委員会に、右各発言の取り扱いを付議した(丙3、被告Y2本人)。

 (九)

 同月9日、被告Y2は、原告に対し、本件フォーラムの運営委員会における議論をふまえて、(1) まず、原告に発言を読んでもらい、どの部分が名誉毀損にあたるか指摘を受けたうえ、(2) 右(1)で指摘された発言の違法性について被告ニフティ(Y3)の判断を仰ぎ、削除が妥当ということになれば、当該文章を削除する、(3) 発言削除の際は「原告からの訴えがあり、被告ニフティ(Y3)と厳密な法的検討をした結果違法性のある発言と認め削除する」旨の理由を付記するとの処理案を、電子メールにより提示した(甲44)が、同月10日、原告は、被告ニフティ(Y3)に対し、右のようを対応は受け入 れられない旨の電子メールを送信した(甲45)。その後、同月14日、小泉は、原告に対し、電子メールによって、右のような被告Y2の案にしたがって、本件フォーラムの書き込みに目を通してもらいたい旨の申入れをするとともに、具体的に指摘された発言については削除される可能性が 高い旨の指摘をした(甲46、乙19)。

 (一〇)

 同月16日、原告は、被告Y2及び小泉に対し、誹謗中傷の発言者は原告の勤務先まで知っており、しかも発言内容から原告を脅迫しているのであるから当面、原告の氏名(ハンドル名を含む)を出して発言の削除をすることはしないようにとの電子メールを送信した(甲47)。これに対し、被告Y2は、同月18日、原告に対し、右電子メールの趣旨がそもそも発言の削除はしない方がよいということなのか、削除はして欲しいが名前を出すなということなのかを確認するため、自分に電話を入れて欲しい旨の電子メールを送信した(甲48)。

 (一一)

 同月20日、原告と被告Y2は、約一時間にわたって、電話で本件各発言に対する対応について話合いをした(甲114、丙3、原告本人、被告Y2本人)。その結果、被告Y2は、最終的には、発言削除にあたって、原告から要請があったことを積極的に付記することはしないことについては了承したが、原告に対し、会員から、原告からの要請があったかどうかについて質問があれば、原告からの要請はなかったという説明をするとの約束はできない旨の説明も併せて行った。これに対し、原告は、信頼できる人に相談するので、その結論が出るまで発言削除は待って欲しい旨の回答をした(乙10、丙3、被告Y2本人、弁論の全趣旨)。

 (一二)

 その後、原告から被告ニフティ(Y3)及び被告Y2に対して具体的な接触はなく、被告ニフティ(Y3)及び同Y2も、右(八)で原告から指摘された被告Y1の発言に対して特に対処はしなかったが、平成6年2月15日になって、原告代理人から、被告ニフティ(Y3)及び被告Y2に対し、原告の名誉を毀損する発言の削除、被告Y1の住所・氏名の開示等を要求する書面が送付された(甲1の1・2)。被告Y2は、右のような要求を受け、右同日、本件各発言のぅち、右書面で指摘されていたもの(発言一覧表(二)記載の符号6ないし11)について、本件フォーラムの7番会議室から削除する措置をとった(乙19、丙3、証人小泉秀代、被告Y2本人)。

 (一三)

 平成6年3月2日、原告代理人は、被告ニフティ(Y3)に対し、被告Y1の住所・氏名の開示等を書面をもって要求した(甲2)。被告ニフティ(Y3)は、同月17日、被告Y1に対して、今後、誹謗中傷発言があった場合には、会員資格の剥奪もあり得る旨、電子メールをもって警告するとともに(乙17)、同月18日、原告代理人に対し、右(一二)の書面に対する回答を行った。右回答の中で、被告ニフティ(Y3)は、被告Y1の住所・氏名の開示については、電気通信事業法104条に違反するおそれが極めて高いことなどを理由に、これを拒絶した。

 原告は、平成6年4月21日、東京地方裁判所に本訴を提起し、被告Y2対しては同月30日に、被告ニフティ(Y3)に対しては平成6年5月2日に、それぞれ訴状副本の送達がされた(記録上明らかな事実)。そして、被告Y2及び被告ニフティ(Y3)は、それぞれの代理人を交え、原告から、訴状において初めて指摘を受けた発言(本件各発言のうち、右4(一二)で削除した以外のもの)に対する対応を協議し、平成6年5月25日(本件第一回口頭弁論期日当日)、被告Y2は、これらの発言を本件フォーラムの電子会議室の登録から外し、同被告がフロッピーに保管する措置をとった(乙19、丙3、被告Y2本人)。


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作成責任者:町村泰貴
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