最判昭和56年9月24日民集35巻6号1088頁

百選90

(事実)

 X1は、Yに対して所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起。
 Yは、訴外AがX1またはX1の養子のX2より代理権を授与され、自己との間に譲渡担保設定契約をなし、所有権移転登記をしたものであると抗弁した。
 係争土地はX1の所有であり、X1の関知しないところでX2がX1の代理人としてAに譲渡担保及び移転登記手続の委任をしたものであった。
 原審の口頭弁論終結前の昭和54年7月15日にX1は死亡して同人の権利義務関係をX2が承継したが、訴訟代理人がいたため訴訟は中断せず(民訴208条213条参照)、原審は同年10月30日に弁論を終結して判決言い渡し期日を同年12月25日と指定した。
 その後X1の死亡を知ったYは、同年11月7日に口頭弁論の再開を求め、14日にはX1の死亡を証明する戸籍謄本と口頭弁論再開申立書、およびX2がX1の権利義務一切を承継したことを記した準備書面を提出したが、原審は口頭弁論を再開せずにY敗訴の判決を言い渡した。

(判旨)

 破棄差戻
 「いったん終結した弁論を再開すると否とは当該裁判所の専権事項に属し、当事者は権利として裁判所に対して弁論の再開を請求することができないことは当裁判所の判例とするところである(判決略)。しかしながら、裁判所の右裁量権も絶対無制限のものではなく、 弁論を再開して当事者にさらに攻撃防御の方法を提出する機会を与えることが明らかに民事訴訟における手続的正義の要求するところであると認められるような特段の事由がある場合には、裁判所は弁論を再開すべきであり、これをしないでそのまま判決するのは違法であることを免れないというべきである。

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