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破産法
374条−382条・附則

第4編 罰則

第374条〔詐欺破産罪〕
 債務者破産宣告ノ前後ヲ問ハス自己若ハ他人ノ利益ヲ図リ又ハ債権者ヲ害スル目的ヲ以テ左ニ掲クル行為ヲ為シ其ノ宣告確定シタルトキハ詐欺破産ノ罪ト為シ10年以下ノ懲役ニ処ス
  1 破産財団ニ属スル財産ヲ隠匿、毀棄又ハ債権者ノ不利益ニ処分スルコト
  2 破産財団ノ負担ヲ虚偽ニ増加スルコト
  3 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財産ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ為サス又ハ不正ノ記載ヲ為シ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
  4 第187条ノ規定ニ依リ裁判所書記官カ閉鎖シタル帳簿ニ変更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト

第375条〔過怠破産罪〕
 債務者破産宣告ノ前後ヲ問ハス左ニ掲クル行為ヲ為シ其ノ宣告確定シタルトキハ5年以下ノ懲役又ハ30万円以下ノ罰金ニ処ス
  1 浪費又ハ賭博其ノ他ノ射倖行為ヲ為シ因テ著ク財産ヲ減少シ又ハ過大ノ債務ヲ負担スルコト
  2 破産ノ宣告ヲ遅延セシムル目的ヲ以テ著ク不利益ナル条件ニテ債務ヲ負担シ又ハ信用取引ニ因リ商品ヲ買入レ著ク不利益ナル条件ニテ之ヲ処分スルコト
  3 破産ノ原因タル事実アルコトヲ知ルニ拘ラス或債権者ニ特別ノ利益ヲ与フル目的ヲ以テ為シタル担保ノ供与又ハ債務ノ消滅ニ関スル行為ニシテ債務者ノ義務ニ属セス又ハ其ノ方法若ハ時期カ債務者ノ義務ニ属セサルモノ
  4 法律ノ規定ニ依リ作ルヘキ商業帳簿ヲ作ラス、之ニ財産ノ現況ヲ知ルニ足ルヘキ記載ヲ為サス又ハ不正ノ記載ヲ為シ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト
  5 第187条ノ規定ニ依リ裁判所書記官カ閉鎖シタル帳簿ニ変更ヲ加ヘ又ハ之ヲ隠匿若ハ毀棄スルコト

第376条〔準債務者の破産罪〕
 債務者ノ法定代理人、理事及之ニ準スヘキ者並支配人前2条ニ規定スル行為ヲ為シ債務者ニ対スル破産宣告確定シタルトキハ前2条ノ例ニ依ル相続財産ニ対スル破産ニ於テ相続人並其ノ法定代理人及支配人ニ付亦同シ

第377条〔監守違反罪〕
 (1)本法ニ依リ監守ヲ命セラレタル者逃走シ又ハ裁判所ノ許可ヲ得スシテ外人ト面接若ハ通信シタルトキハ1年以下ノ懲役又ハ5万円以下ノ罰金ニ処ス
 (2)破産者裁判所ノ許可ヲ得スシテ居住地ヲ離レタルトキ罰前項ニ同シ

第378条〔第三者の詐欺破産罪〕
 債務者及第376条ニ規定スル者ニ非スシテ第374条ニ規定スル行為ヲ為シタル者又ハ自己若ハ他人ヲ利スル目的ヲ以テ破産債権者トシテ虚偽ノ権利ヲ行ヒタル者ハ債務者ニ対スル破産宣告確定シタルトキハ10年以下ノ懲役ニ処ス

第379条〔強制和議取消と罰則の適用〕
 第374条、第375条及前条ノ規定ノ適用ニ付テハ強制和議ノ取消ハ之ヲ破産ノ宣告ト看做ス

第380条〔収賄罪〕
 (1)破産管財人又ハ監査委員其ノ職務ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキハ3年以下ノ懲役又ハ20万円以下ノ罰金ニ処ス破産債権者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者債権者集会ノ決議ニ関シ賄賂ヲ収受シ又ハ之ヲ要求若ハ約束シタルトキ亦同シ
 (2)前項ノ場合ニ於テ収受シタル賄賂ハ之ヲ没収ス其ノ全部又ハ一部ヲ没収スルコト能ハサルトキハ其ノ価額ヲ追徴ス

第381条〔贈賄罪〕
 (1)破産管財人、監査委員、破産債権者、其ノ代理人又ハ理事若ハ之ニ準スヘキ者ニ賄賂ヲ交付、提供又ハ約束シタル者ハ3年以下ノ懲役又ハ20万円以下ノ罰金ニ処ス
 (2)前項ノ罪ヲ犯シタル者自首シタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得

第382条〔説明義務違反罪〕
 (1)第153条ノ規定ニ依リ説明ノ義務アル者故ナク説明ヲ為サス又ハ虚偽ノ説明ヲ為シタルトキハ1年以下ノ懲役又ハ5万円以下ノ罰金ニ処ス
 (2)前項ノ罪ヲ犯シタル者破産裁判所ニ其ノ事実ヲ申出テタルトキハ其ノ刑ヲ減軽又ハ免除スルコトヲ得


附 則

第383条〔施行期日〕
 本法施行ノ期日ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム〔大正11年勅冷498号により、大正12年1月1日から施行〕

第384条〔廃止法律〕
 明治23年法律第32号商法第3編、同年法律第101号及家資分散法ハ之ヲ廃止ス

第385条〔他の法律の削除〕
 民法施行法第2条第3条及非訟事件手続法第152条第153条ハ之ヲ削除シ刑法施行法第25条第1項第3号ハ之ヲ削ル

第386条〔身代限り       〕
 (1)他ノ法令中身代限ノ処分ヲ受ケ債務ヲ完済セサル者ニ関スル規定ハ破産又ハ家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ニ之ヲ準用ス
 (2)身代限ノ処分ヲ受ケ債務ヲ完済セサル者及家資分散ノ宣告ヲ受ケタル者ハ他ノ法令ノ適用ニ付テハ之ヲ破産者ト看做ス

第387条〔本法施行前の破産申立等の準拠法〕
 (1)本法施行前破産若ハ復権ノ申立、破産若ハ家資分散ノ宣告又ハ支払猶予ノ許可若ハ仮許可アリタルモノニ付テハ仍旧法ニ依ル但シ明治23年法律第32号商法第1054条ノ規定ハ此ノ限ニ在ラス
 (2)本法施行前ニ為シタル家資分散又ハ支払猶予ノ申立ハ決定ヲ以テ之ヲ棄却ス此ノ決定ニ対シテハ不服ヲ申立ツルコトヲ得ス

第388条〔旧法による破産・家資分散・身代限と復権申立〕
 旧法ニ依リテ破産若ハ家資分散ノ宣告又ハ身代限ノ処分ヲ受ケタル者ハ本法ニ依リテ復権ノ申立ヲ為スコトヲ得此ノ申立ハ其ノ事件ノ第1審裁判所ニ之ヲ為スコトヲ要ス

第389条〔破産申立義務者の和議開始申立〕
 他ノ法律ニ依リ法人ノ理事又ハ之ニ準スヘキ者カ其ノ法人ニ対シ破産ノ申立ヲ為スコトヲ要スル場合ニ於テモ和議開始ノ申立ヲ為スコトヲ妨ケス

第390条・第391条
 〔省略〕


昭和27年6月7日改正法(法律173号)の附則

(1)この法律は、昭和27年8月1日から施行する。

(2)[略]

(3)この法律施行前に破産手続の解止のあつた事件の破産者は、破産法第366条ノ21第1項第2号及び第3号に掲げる場合を除き、同法第366条ノ2第1項の規定にかかわらず、この法律施行の日から1年内は、免責の申立をすることができる。この法律施行の際裁判所に係属中の破産事件の破産者も、また同様である。

(4)破産法第366条ノ2第5項の規定は、前項の破産者がその責めに帰することのできない事由によって同項の期間内に免責の申立をすることができなかつた場合に準用する。

(5)この法律施行前に破産法第366条ノ21第1項第2号から第4号にまでに掲げる事由のあつた破産者は、この法律施行の際に復権する。

(6)前項の規定により強制和議認可の決定の確定に基く復権のあった後強制和議取消の決定が確定したときは、復権は、将来に向かってその効力を失う。

(7)第5項の規定は、身代限の処分を受けた者及び家資分散の宣告を受けた者に準用する。