Y社は、昭和46年に豊前市の一部海域を埋め立てて、出力50万キロワット二基の発電機を備える重油専焼式の豊前火力発電所を建設する計画を立て、右発電所の建設用地として、豊前市の八屋明神地区の公有水面約39万平方メートルの埋立につき、福岡県知事の埋立免許を得て、昭和50年10月3日現在既に第一工区の埋立を完了し、第二工区も完了に近く、全体の三分の二の埋立を終え、出力50万キロワットの火力発電所一号機の建設を完成し、現在操業中である。
これに対してXら7名は、憲法13条、25条に基づき、健康で快適な生活を維持するに足る良好な環境を享受し支配する権利、即ち環境権を有するとし、漁業者でも農業者でもないXらにとっても漁業被害、農業被害は、直ちに生活環境に悪影響を与えるから、これらに言及する必要があり、また、今後豊前平野に流入してくる人々のためにも現在の環境を守り抜く必要があると主張した。そして、Xらそれぞれの私的権利、私的利益を追求しているのではなく、豊前平野、豊前海の地域の環境保持を目的とし、地域の代表として本訴の提起、追行をしているものであるとして、環境権に基づき操業差止及び原状回復を求める訴えを提起した。