最判昭和56年4月7日民集35巻3号443頁

(百選第二版1事件)
板まんだら事件

(事実)


 宗教法人日蓮正宗(Y)は、日蓮上人建立の本尊「板曼陀羅」を安置する正本堂「事の戒壇」を建立するとして寄付を募り、Xらはこれに応じた寄附をした。
 ところがその後、「板曼陀羅」は偽物であると判明し、正本堂も広く日蓮上人の教えが世に広まることを意味する「事の戒壇」の完成には当たらないということになったため、寄附は錯誤であるとしてその返還を求める訴えを提起した。
 第一審は訴えを却下したが、原審は錯誤に基づく不当利得返還の是非は判断できるとして第一審判決を取り消して差し戻した。

(判旨)


 原判決破棄、Xの訴え却下。
 「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、その結果信仰の対象の価値または宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされてはいるが、本件訴訟の帰すうを左右する必要不可欠のものと認められ、また、記録にあらわれた本件訴訟の経過に徴すると、本件訴訟の争点及び当事者の主張立証も右の判断に関するものがその核心となっていると認められることからすれば、結局本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、 裁判所法三条 にいう法律上の争訟にあたらないものといわなければならない。」

判例評釈・解説

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