日本の輸入業者Aは、ブラジル国の輪出業者Bから本件原糖を買い受け、Bはオランダ・アムステルダム市に本店をおき日本国内に営業所を持つ海運業者であるYと海上運送契約を締結し、Yから本件船荷証券の発行・交付を受けてAに交付した。Yは、本件原糖をその所有船チサダネ号に船積してブラジル国サントス港から大阪港まで海上運送したが、チサダネ号の不良により積荷が濡れて160万円を下らない原糖の毀損を生じさせた。Aはこの損害を保険会社Xとの積荷海上保険契約に基づき、137万6180円の保険金の支払いを受けた。そこでXが、AのYに対する損害賠償請求権を代位取得した、と主張して、Yに対し損害賠償及び遅延損害金の支払を求めて、被上告人の営業所所在地を管轄する神戸地方裁判所に提起した。
ところで本件船荷証券には、「この運送契約による一切の訴は、アムステルダムにおける裁判所に提起されるべきものとし、運送人においてその他の管轄裁判所に提訴し、あるいは自ら任意にその裁判所の管轄権に服さないならば、その他のいかなる訴に関しても、他の裁判所は管轄権を持つことができないものとする。」旨の英文の管轄約款(以下「本件管轄約款」という。)が存在していた。Yは、本件管轄約款は国際的専属的裁判管轄の合意であるから、本件訴訟については、アムステルダム市の裁判所が専属管轄権を有し、神戸地方裁判所は裁判権を有しないとの本案前の抗弁を主張した。