ところがその後、XはY2から22万5千円の支払を受けたのみで、残る22万5千円は支払われなかったので、再びY1Y2を被告として、残額22万5千円の支払を求める訴えを提起した。これが本訴である。
「思うに、本来可分給付の性質を有する金銭債務の債務者が数人ある場合、その債務が分割債務かまたは連帯債務かは、もとより二者択一の関係にあるが、債権者が数人の債務者に対して金銭債務の履行を訴求する場合、連帯債務たる事実関係を何ら主張しないときは、これを分割債務の主張と解すべきである。そして、債権者が分割債務を主張して一旦確定判決をえたときは、更に別訴をもって同一債権関係につきこれを連帯債務である旨主張することは、前訴判決の既判力に抵触し、許されないところとしなければならない。
これを本件についてみるに、Xは、前訴において、Y等に対し45万円の債権を有する旨を主張しその履行を求めたが、その連帯債務なることについては何ら主張しなかったので、裁判所はこれを分割債務の主張と解し、この請求どおり、Yにおいて45万円(すなわち各自22万5千円)の支払をなすべき旨の判決をし、右判決は確定するに至った・・・。しかるにXは、本訴において、右45万円の債権は連帯債務であって前訴はその一部請求に外ならないから、残余の請求として、Y等に対し連帯して22万5千円の支払を求めるというのである。そしてY等が45万円の連帯債務を負担した事実は原判決の確定するところであるから、前訴判決が確定した各自22万5千円の債務は、その金額のみに着目すれば、あたかも45万円の債務の一部にすぎないかの観もないではない。しかしながら、Xは、前訴において、分割債務たる45万円の債権を主張し、Y等に対し各自22万5千円の支払を求めたのであって、連帯債務たる45万円の債権を主張してその内の22万5千円の部分(連帯債務)につき履行を求めたものでないことは疑がないから、前訴請求をもって本訴の訴訟物たる45万円の連帯債務の一部請求と解することはできない。のみならず、記録中の乙三号証(請求の趣旨拡張の申立と題する書面)によれば、Xは、前訴において、Y等に対する前記45万円の請求を訴訟物の全部として訴求したものであることをうかがうに難くないから、その請求の全部につき勝訴の確定判決をえた後において、今さら右請求が訴訟物の一部の請求にすぎなかった旨を主張することは、とうてい許されないものと解すべきである。」