最判平成15年2月21日 民訴法260条2項による損害賠償を、上告審として命じた事例。



(要旨)

 民訴法260条2項の申立てについて  上告人は,原審において民訴法260条2項の申立てをし,当審においてもその裁判を求めているが,その理由として主張する事実関係は,被上告人の争わないところである。そして,原判決を破棄し,第1審判決を取り消すべきことは前記説示のとおりであり,第1審判決に付された仮執行宣言は,その効力を失う。したがって,同仮執行宣言に基づいて給付した金員及びその執行費用の合計額である374万2894円並びにこれに対する給付の日の翌日である平成10年12月22日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による損害金の支払を求める上告人の申立ては,正当として認容すべきである。

(コメント)

 上告審は法律審であるため、新たな事実認定ができない。そこで上告審にいたって新たに請求を追加することも原則としてできない。民訴法260条2項は、仮執行宣言付き本案判決が上級審で取り消される場合に、結果的に誤りであった執行により債務者の被った損害を債権者に賠償させる無過失損害賠償責任を定めたもので、別訴による請求も可能(最判昭和29年3月9日民集8巻3号637頁参照)だが、特に法が原状回復を容易にさせる趣旨で追加的請求を認めたものである。そこで、上告審で仮疾呼宣言付き原判決が取り消された場合に、上告審が新たに260条2項の要件事実を認定して賠償を命じることができるかどうか、議論の余地があった。
 本判決は、要件事実に争いがないことを指摘して請求を認めたが、要件事実に争いがある場合、特に損害額に争いがある場合にはどのように判断するのか、精神的苦痛による慰謝料請求がなされていた場合(これが可能なことにつき、最判昭和52年3月15日民衆31巻2号289頁参照)にはどう判断するのか、なお疑問が残されている。


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