名古屋地判平成11年8月4日

判例集不登載

被告の当事者能力がないこと、および請求原因の特定がないことを理由に、口頭弁論を経ないで却下された事例


平成11年 (ワ) 第 2176 号 会の解散及び規約公表請求事件

[主文]

一 本件訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。

[事実及び理由]

第一 

 原告らは、本訴において、平成11年5月6日付訴状、及び別紙同月19日付訴状訂正申立書 (一) を提出して、訂正後の請求の趣旨として、
「一 被告らは、『ライフスペースを考える会』を解散するか、または、『ライフスペースを考える会』の規約に、原告有限会社ライフスペース及び原告Tの名誉を毀損させることを目的とする旨記載して公表せよ。
二 訴状費用は被告らの負担とする。」
との裁判を求め、請求原因として、右訴状訂正申立書 (一) 中の「請求の原因」記載のとおり主張している。

第二 当裁判所の判断

一 ライフスペースを考える会を被告とする訴えについて

 民事訴訟において、訴訟の当事者となりうるためには、当事者能力が必要であり、当事者の能力の存在は、訴訟要件の一つである。

 原告らは、ライフスペースを考える会を被告として本訴を提起しているが、記録を検討してみても、ライフスペースを考える会が、法人格を有する社団又は財団、あるいは、民事訴訟法29条が規定する「 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるもの」に該当するものと認めることはできない。当裁判所からの同年6月24日付釈明命令に対する原告らの同年7月7日付上申書、並びに原告らが当裁判所提出した各準備書面及び各書証等を検討してみても、右認定は左右されない。

 したがって、ライフスペースを考える会に当事者能力を認めることはできないから、本訴のうち同会を被告とする部分は、訴訟要件を欠き不適法である。

二 K及びSを被告とする訴えについて

 民事訴訟は、当事者間の具体的な私法上の紛争に対し法律を適用することにより権利関係の存否を判断する司法作用であるから、訴えを提起するに当たっては、請求の趣旨及び原因を明らかにする必要がある (民事訴訟法133条2項参照)。

 これを本件についてみるに、原告らがK及びSを被告として、請求の趣旨一で申し立てる、会の解散請求及び規約公表請求を求めることができる各法的根拠 (請求原因) は、右訴状訂正申立書 (一) で明らかにされていない。しかも、前示のとおり、ライフスペースを考える会は、法人格を有する社団又は財団、あるいは、法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものに該当すると認めることもできない。そのため、当裁判所は釈明命令で、原告らに対し、右命令送達の日から20日以内に右請求原因を明らかにするように命じ、右命令は同年6月26日原告らに送達されたことが認められる。しかし、原告らは、右期間内に同年7月7日付上申書を提出し、右上申書中には、国連憲章を右各請求の法的根拠にするかのような記載もあるが、他方、原告らが、右各請求につき実定法上の根拠がないことを認める趣旨の記載もあって、結局、各法的根拠は明らかにされていない。

 したがって、原告らは、本訴のうちK及びSを被告とする、会の解散請求及び規約公表請求につき、当裁判所の釈明命令に応じて各請求原因を明らかにしなかったものであり、右各訴えは、実定法上の根拠を欠き、訴訟上の請求として適格性を具備しないと認められるから、請求原因が特定できず不適法である。原告らが当裁判所に提出した各準備書面及び各書証等を検討してみても、以上の判断は左右されない。

 なお、当裁判所は、前記釈明命令と同時に、第一回口頭弁論期日を指定した。しかし、原告らは、前記のとおり同年7月7日付上申書を提出して、本訴において、被告らに対し、原告らに対する一切の名誉毀損行為の中止を求めるように請求の趣旨を再度訂正する意思はなく、また、損害賠償金を請求する意思もないとして、釈明命令に応じない意思を明示すると共に、原告Tは、訴訟代理人弁護士を選任することもなく、当裁判所に同年6月25日受付の欠席届を提出して、本訴で開かれる予定の全ての口頭弁論期日に出席する意思がない旨上申している。

 したがって、原告ら提出の訴状及び訴状訂正申立書(一)に加えて、当裁判所の釈明命令に対する前記上申書、及び原告Tの欠席届の各内容を検討すると、原告らの本訴提起は、被告らが答弁書で主張するように、訴訟の濫用に当たる可能性もあると認められる。

 よって、本件訴えは、いずれも不適法であって、審理の経緯等に照らし、その不備を補正することができないものと認められるから、民事訴訟法140条に基づき、口頭弁論を経ないで却下することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法61条、65条を適用して、主文のとおり判決する。

名古屋地方裁判所 民事第4部
裁判長裁判官     水谷正俊
裁判官        佐藤 真弘
裁判官        今泉 愛

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