広島地決昭和61年11月21日判時1224号76頁

百選136

(事実)

 Xはけいれん発作や精神的に不安定となったので、Y1の経営するA病院で診察を受けた。Y1は直ちにXを入院させ、家族の面会を拒絶し、翌月に面会したときには全く歩行ができず、言葉もわからない状態となっていた。Xの家族がY1や副院長Y2に病状や治療の説明を求めたところ、詳しい説明はなく、家族を叱りつけたり「身体障害者手帳が三級になったんだからいいじゃあないか」などと述べ、さらに看護婦からは早く転院させるよう忠告を受けた。そこで家族に連れ戻されたXがY12に対する損害賠償請求の訴えを提起する準備として、A病院の医療記録について「改ざんのおそれ」を理由とする証拠保全を申し立てた。

 Xの最初の申立が却下された後、再度の申立に対して原決定は却下したため、Xが抗告した。


(決定要旨)

原決定取消、証拠保全決定および検証物提示命令

 証拠保全の事由は「申立において明らかにするとともに、これを疎明することを要する( 民訴345条)とされているところ、右事由の疎明は当該事案に即して具体的に主張され、かつ疎明されることを要すると解するのが相当であり、右の理は診療録等の改ざんのおそれを証拠保全の事由とする場合でも同様である。

 これを敷衍するに、人は、自己に不利な記載を含む重要証拠を自ら有する場合に、これを任意にそのまま提出することを欲しないのが通常であるからといった抽象的な改ざんのおそれでは足りず、当該医師に改ざんの前歴があるとか、当該医師が、患者側から診療上の問題点について説明を求められたにもかかわらず相当の理由なくこれを拒絶したとか、或いは前後矛盾ないし虚偽の説明をしたとか、その他ことさらに不誠実又は責任回避的な態度に終始したことなど、具体的な改ざんのおそれを一応推認させるに足る事実を疎明することを要するものというべきである。」

 以下、上記の事実を認定して改ざんのおそれの疎明があるとした。


判例評釈・解説


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