本件は、PC−VAN内のチャット(OLT)で、会員XY他数名の発言したログを、Xが拒否しているにも関わらずYが電子掲示板に掲載し公開したので、Xが名誉毀損、プライバシー侵害、通信の秘密侵害、著作権侵害を理由に損害賠償請求した事例である。
会員Xについては、ある出版社の社長個人名義のIDを無断で利用し、女性会員に嫌がらせをしたという疑惑が持ち上がり、当の女性会員および出版社の側からXの無断利用の事実が掲示された。しかしX自身は盗用や流用を否定しており、議論が続いていた。問題のチャットログは、第三者である会員Yが以上の事実の真偽をXに質問したときのものである。
裁判所は原告の請求を棄却し、名誉毀損に関しては被告の掲示した発言によっても既にある疑惑を改めて表明したにすぎないこと、かりに原告の社会的評価が低下したとしても、「被告の本件掲示行為は、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出たものであり、被告において、原告が右IDを不正使用したと信じるにつき相当な理由があったものと認められるから、違法性がない」とした。またプライバシー侵害はそもそもOLTが公開の場でなされている上、掲示内容も既に公開済みのものであるから成立せず、通信の秘密侵害も著作権侵害もいずれも成り立たないとした。