PC−VANチャットログ無断掲載事件

東京地裁平成9年12月22日判決

【事案と判旨概要】

 本件は、PC−VAN内のチャット(OLT)で、会員XY他数名の発言したログを、Xが拒否しているにも関わらずYが電子掲示板に掲載し公開したので、Xが名誉毀損、プライバシー侵害、通信の秘密侵害、著作権侵害を理由に損害賠償請求した事例である。

 会員Xについては、ある出版社の社長個人名義のIDを無断で利用し、女性会員に嫌がらせをしたという疑惑が持ち上がり、当の女性会員および出版社の側からXの無断利用の事実が掲示された。しかしX自身は盗用や流用を否定しており、議論が続いていた。問題のチャットログは、第三者である会員Yが以上の事実の真偽をXに質問したときのものである。

 裁判所は原告の請求を棄却し、名誉毀損に関しては被告の掲示した発言によっても既にある疑惑を改めて表明したにすぎないこと、かりに原告の社会的評価が低下したとしても、「被告の本件掲示行為は、公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出たものであり、被告において、原告が右IDを不正使用したと信じるにつき相当な理由があったものと認められるから、違法性がない」とした。またプライバシー侵害はそもそもOLTが公開の場でなされている上、掲示内容も既に公開済みのものであるから成立せず、通信の秘密侵害も著作権侵害もいずれも成り立たないとした。


【目次】

主文
事実及び理由
第一 原告の請求
第二 事案の概要
一 前提事実
二 争点
1 名誉毀損
2 プライバシー侵害
3 通信の秘密の侵害
4 著作権の侵害
5 正当防衛ないし社会的相当行為
第三 争点に対する判断
一 認定事実
二 名誉毀損について
三 プライバシー侵害について
四 通信の秘密の侵害について
五 著作権の侵害について
六 (まとめ) 第四 結論


【謝辞】

 この判決は事件関係者のお一人から提供していただきました。心より感謝いたします。なお、掲載の責任は私のみにあります。ご意見などは、以下へメール願います。
掲載責任者:町村泰貴 WWW= T&V